本邦における重度の運動障害を有する小児の栄養摂取状況調査

研究紹介

本邦における、重度の運動障害を有する小児の栄養摂取状況調査

障害を持つ子供たちの栄養摂取については、栄養摂取不足や肥満など、これまでさまざまな問題が指摘されています。中でも、脳性麻痺やてんかん性脳症など、運動障害を有する障害児では栄養摂取不足が報告されており、児の成長障害や筋肉の発達障害をもたらすことや、それによる呼吸機能の低下や免疫機能の障害も指摘されています。それゆえ、栄養管理は児のQOLや生存率を左右する重要な役割の一つと考えられます。

重度の運動障害を有する患児は、自力での摂食が困難で、また咀嚼機能障害や嚥下機能障害、胃食道逆流、便秘などさまざまな合併症を認めることが多く、これらが栄養摂取不足となる要因となっています。彼らは食事の大半を家族や介護者のサポートに依存した、いわば受動的な食事摂取に頼っており、食物形態も限定されます。こういった子供たちの栄養摂取においては、適正な量と質の管理が非常に重要です。

しかし本邦では、障害児の食事摂取について、その摂取量に注目した研究は非常に少なく、彼らがどのようなものを、どれだけの量摂取しているかについての情報がほとんどありません。多様な食事形態を持ち、食べられる食品が限られ、食べこぼしが多い彼らの食事内容を、正確に調査することが非常に困難であることも、理由の一つです。

我々は、これまで多くの大規模食事調査を実施してきた東京大学社会予防疫学教室と協力し、これまでの研究で確立した方法論を応用して重度の障害を有する小児についての大規模な食事調査を計画中です。本研究の目的は、患児の栄養素レベルでの摂取量を正しく調査、評価することです。栄養摂取量の過多・欠乏の原因を食品レベルにまで遡って追究することができるのが食事調査の強みであり、それが障害児の栄養状態改善への一助となることが期待されます。