ヒト腸内細菌叢(マイクロバイオーム)解析を用いた小児外科疾患の病因解明と新たな診断・治療法の創出
研究紹介
ヒト腸内細菌叢(マイクロバイオーム)解析を用いた小児外科疾患の病因解明と新たな診断・治療法の創出
私達の腸内に存在する腸内細菌の数は、私達の体を構成する細胞の数よりも多く、全ての腸内細菌の遺伝情報は、ヒトの遺伝情報よりも遥かに膨大です。この多くの情報を内包する腸内細菌叢はヒトの生理状態(健康と病気)と密接に関連しており、近年、次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢の網羅的解析により、病気の原因解明や新たな診断・治療法の開発を目的とする研究が広く行われています。その結果、糞便移植(=Fecal Microbiota Transplantation: FMT)などの新しい治療法が開発され、また、分娩経路や哺乳方法などの周産期の環境がヒト一生の腸内細菌叢形成に大きな影響を与えることなどが確認されています。
私達、小児外科医が日々対峙する小児の疾患は、その病因が解明されていないものが多く、診断や治療に難渋することが少なくありません。これらの疾患の中には腸内細菌叢が影響を与えていると考えられているものも含まれており、東京大学小児外科は、非侵襲的に採取できる便を採取し腸内細菌叢を解析する事で、小児外科疾患の病因解明と新たな診断・治療法の創出を目的とする研究を進めています。