胆道閉鎖症の病態解明に関する研究

研究紹介

胆道閉鎖症特異的iPS細胞を用いた胆管発生およびその障害メカニズムの解明研究

胆道閉鎖症は、先天的要素、遺伝的要素、感染、免疫異常、アポトーシスなどが原因の可能性として指摘されていますが現段階では不明です。本研究では、胆道閉鎖症患児由来の血球から胆道閉鎖症特異的iPS細胞の樹立を行い、「Sox9陽性胆管上皮細胞由来の胆管発生過程(胆管樹形成や胆管前駆細胞由来の肝細胞分化)のいずれかの段階での遺伝子異常または胎内ウィルス感染による胆管発生過程の障害、免疫応答異常、アポトーシスの誘導などにより胆道閉鎖症は発症している」という仮説をたて、iPS細胞から肝細胞を誘導する方法を利用し、胆道閉鎖症患児から樹立した胆道閉鎖症特異的iPS細胞からCPM陽性肝前駆細胞を誘導し、研究過程で作製したSox9レポーターiPS細胞を用いて胆管上皮細胞を誘導、正常人由来のiPS細胞から分化誘導させた胆管上皮細胞と網羅的遺伝子プロファイルの比較を行い、3次元培養系を用いたウィルス感染実験、細胞遊走試験、アポトーシス誘導実験などで胆道閉鎖症の病態モデルを作成し、その病態解明につなげることを目的としています。

オキシステロールにおける胆道閉鎖症バイオマーカーとしての有用性

胆道閉鎖症は、救命には乳児期早期に肝門部空腸吻合術(葛西手術)が必要な疾患ですが、病因・病態・至適治療法は解明されておらず、診断にも手術が必要であり、様々な問題があります。予後は術後1年以内の肝移植必要症例が40%・30歳までの肝移植必要症例が70%と 悪く、肝移植を回避するためには早期診断・早期手術が必要です。生存率向上には早期診断及び適切な肝移植のタイミング決定が重要です。そこで、胆道閉鎖症患児の血液および尿検体を用いて早期診断や肝移植必要性の予測を評価できるバイオマーカーの存在が望まれますが、現状ではまだありません。オキシステロールは主に肝臓で生合成される酸化コレステロールの総称であり、肝・神経疾患のバイオマーカーとして幅広く報告されています。オキシステロールとは酸化コレステロールの総称であり、種々の構造類似化合物が存在し、生体内では異化代謝の中間生成物・核内レセプターのリガンドとしても機能しています。近年ではアルツハイマー病や脳腱黄色腫、動脈硬化等といった様々な疾患のバイオマーカーとしての可能性が報告されています。本研究では、胆道閉鎖症児の血清と尿のオキシステロールを分析・比較検討し、胆道閉鎖症の診断及び肝移植の予測(術後1 年以内)におけるバイオマーカーとして有用か検討しています。

学会発表

  • Kenichiro Konishi, Jun Ishihara, Yugo Takaki, Hajime Takei, Hiroshi Nittono, Akihiko Kimura, Tatsuki Mizuochi. Oxysterols in pediatric acute liver failure with hepatic encephalopathy: a pilot study. ESPGHAN 2018, Geneva, Switzerland
  • Ken-ichiro Konishi, Yugo Takaki, Hajime Takei, Jun Ishihara, Hiroshi Nittono, Akihiko Kimura, Tatsuki Mizuochi. Urinary and serum oxysterols in children: developmental pattern and potential biomarker for pediatric liver disease. NASPGHAN 2018, Hollywood, FL, USA.

モデルマウスを用いた胆道閉鎖症の病態解明・診断・治療に関する研究

胆道閉鎖症は新生児期もしくは乳児早期に発症して黄疸となる病気の一つです.肝臓から分泌される胆汁の出口となる胆管が閉塞することで起こります。葛西手術と呼ばれる手術が開発され治療のない病気ではなくなりましたが、手術後に肝不全になってしまい、肝臓移植を必要とするお子さんも多くいらっしゃいます。未だ原因や発症の仕組みは明らかになっておらずその解明や予防法、より良い治療法などが必要です。
私たちは2019年度より東京大学農学部(獣医)と共同し、モデルマウスを用いての病態解明・新規診断法・治療法に関して研究しています。これまでの農学部の業績は農学部獣医学専攻獣医解剖学教室のホームページもご参照ください。

獣医学専攻の研究内容のweb address
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/kaibo/Sox17.html